北海道医療大学 北海道医療大学
Another Story

Episode1

〜 出会い編 〜

医療の仕事に触れた高校生たちの
ここから始まるストーリー

Episode 1| 01

入院 × チーム医療

専門分野の知識をもったプロがチームを組む

放課後、自宅とは反対方向のバスに乗り、父が入院している病院へ見舞いに行く。

父は小さな洋食店のオーナーシェフだ。昨日、ランチの仕込みをしている最中に、突然ふらついた。母がそれに気づき、「お父さん、大丈夫?」と声をかけると、「らいじょうるら」とろれつが回っていない。母はすぐに救急車を呼び、父はすぐ近くの総合病院に搬送された。脳梗塞だった。

付き添っている母に頼まれた歯ブラシや下着を売店で買って、入院病棟へ向かった。夕方の病院は静かだ。父は眠っていた。左腕から点滴のチューブがつながっている。ベッドの脇にいた母が僕に気づいて、丸椅子を出してくれた。 「しばらくは点滴を続けるんですって。血液をサラサラにするお薬だって、昨日、薬剤師さんが説明に来てくださったのよ。お父さん、さっきまで起きてたんだけどね、CT検査とかMRI検査とか、生まれて初めてだったから疲れちゃったみたいね。でも、検査の看護師さんたちが親切で安心だったわ」 母は、いつもよりも饒舌だった。きっと不安なんだろう。僕も不安だ。父は元のように動いたり話したりできるのだろうか。生活のこと、店のこと、いろいろ気にかかる。

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「看護師さんって、検査もするんだ」
なんとなくつぶやくと、
「昨日のMRI検査や血液検査を担当したのは、臨床検査技師なんですよ」
と、後ろから声がした。父の点滴の様子を見に来た看護師さんだった。
「臨床検査技師ってね、いろいろな臨床検査を行う医療技術者なんです。この病院には、いろいろな専門職のスタッフがいますから、困ったことや不安なことがあったら、いつでも相談してくださいね」
母や僕の不安な気持ちを察したのか、看護師さんは笑顔で話しかけてくれる。
「それから、リハビリテーションも始まるので、後ほど担当の理学療法士が伺いますね」
「こんなに早くですか?」
病気のときは安静第一と思っていた僕はびっくりした。
「リハビリテーションはできるだけ早く始めたほうが回復状況がよくなるんですよ。もちろん、やみくもに動けばいいということではなくて、症状の進行がないか、血圧は安定しているかといった全身状態をみて、しっかりした医学的管理をしながら、お父様と相談して進めていくので安心してくださいね」

父は毎日がんばってリハビリテーションに取り組んだ。体の右側の軽いまひや、生活や仕事のための動作のしづらさ、発音がうまくできない構音障害は、理学療法士さんや作業療法士さん、言語聴覚士さんのサポートで少しずつよくなっていった。

だけど、新しいタオルを届けに行った日、病室でがっくりと肩を落としたまま、自分の手をにぎりしめている父の姿を見てしまった僕は、たまらなく心配になった。リハビリテーションのときは笑顔なのに、そのときの父は今までに見たことがないほど暗い表情だったからだ。このままで大丈夫なんだろうか。いつでも相談してくださいね、と言ってくれた看護師さんに話してみようか。

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ナースステーションでは、看護師さんと、父のリハビリテーションを担当してくれている理学療法士さんたちが何か打ち合わせをしている。病室に戻ろうとしたら、僕に気がついた看護師さんが出てきて声をかけてくれた。
「何かあったの?」
「ええと…」
打ち合わせ中だし相談するのは悪いかなと思い、切り出せずにいると、看護師さんがにっこり笑って言った。
「今ね、お父様のリハビリテーションのこれからの計画を話し合っていたところなの。悩みや不安があれば力になれるように、お父様とも相談のうえ公認心理師もチームに加わることになったのよ」
「もしかして、父の元気がない様子に、気がついてたんですか?」
「社会復帰してからのこと、心配ですもんね。ほかにも、退院後、お父様が生活しやすいようにお家の環境を見直す、というときにはソーシャルワーカー(社会福祉士)がサポートするので安心してね」

退院した父は自宅でリハビリテーションを続けている。以前は気分が沈むことがあり、「店を続けられるか心配だ」「なんでこんなことになっちゃったんだろう」と言っていた父だが、公認心理師さんにカウンセリングを受けたことで、前向きな気持ちになれたそうだ。そして、自宅や店はソーシャルワーカーさんからのアドバイスで、段差がなく転倒しにくい床にリフォームした。父は、自分が働きやすいだけでなく、車椅子のお客さんも来店しやすい店になったことが嬉しいそうだ。

今、父と母は、店のリニューアルオープンの準備で忙しい。オープン日には、父と僕たち家族をサポートしてくれた医療チームの皆さんを招待したいなと思っている。

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チーム医療にかかわる医療・福祉の専門職に興味がわいたら チーム医療にかかわる医療・福祉の専門職に興味がわいたら
  • 薬学部 薬学科
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Episode 1| 02

リハビリテーションの現場で知った、患者さんの生活や人生に寄り添う人たち。

リハビリテーション ×
PT・OT・ST

「びっくりよ、階段から落ちちゃった!スタントマンみたいに!」

母からのLINEはいつも通り明るかったけど、足のケガはすごく複雑な複雑骨折で、リハビリテーションもがんばらなくちゃいけないらしい。母は仕事も家事もこなすシングルマザー。でも、ある日、めまいを起こして勤め先の階段から落下した。ごめんね、お母さん。無理してたんだよね。私は家事の手伝いさえしてこなかった自分を恥じた。せめて、母が社会復帰するまではリハビリテーションに付き添わなくちゃ。

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母のリハビリテーションは骨折から数日後にスタートした。
「こんなに早くからリハビリテーションするんだ…」
リハビリテーション中の母を見ながらつぶやくと、通りかかった理学療法士の遠山さんが教えてくれた。

「筋肉とか関節って、ほんの数日動かさなかっただけで動かしにくくなるんだよ。だから、痛みのない部分は早めにリハビリテーションをスタートしなくちゃね。本格的なリハビリテーションが始まったら、お母さんが無理なく元の生活に戻れるように、医師のほか、私たち理学療法士や作業療法士が連携してお手伝いをするからね」
「リハビリテーションを担当するのって理学療法士さんだけじゃないんですか?」
リハビリテーションについて何も知らなかった私に、その日、遠山さんはいろいろなことを教えてくれた。

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運動や機器を使って自立した日常生活が送れるようサポートする理学療法士や、患者さんの日常生活に関わる作業を通して社会復帰を援助する作業療法士の仕事のこと。そして、言語・音声・嚥下障害のある患者さんに訓練や検査、援助を行う言語聴覚士という仕事があること。単に、体の機能が回復すればOKじゃなくて、患者さん一人ひとりが、その人らしい生活に戻れるように考えてくれてたなんて、リハビリテーションって奥が深い。そして、そのリハビリテーションでは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3職種が重要なんだってことも知ることができた。

母が仕事に復帰できるのも、きっともうすぐ。無理なく日常生活を送れるように、これからは、私も家事を分担しなくちゃ。

Episode 1| 03

虫歯は痛いだけじゃない。体の健康にとっても大問題!

全身の健康 × 歯科

期末テスト1日目。「日本史B」の「室町時代、北海道は何と呼ばれていたか。漢字で書け」という問題で、「エゾ」の漢字が思い出せずに悶絶していたら、突然、奥歯が痛み始めた。

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家に帰ってからも痛みは続く。期末はまだ3日もある。なんてタイミングだ。痛みはあっても腹は空く。看護師をしている母親は今日も夜勤だから昼食は自分で用意する。栄養サポート!と書かれたバータイプのスナックだけど。噛むたびに奥歯が痛い。栄養補助食品は短時間で効率よく栄養が摂れるだろうから気に入っている。受験生にぴったりだ。でも、痛い。仕方がない。歯医者へ行こう。

近所にあるのは蝦夷歯科。エゾシカ?そうだエゾってこう書くんだった。

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「いつから痛いの?」。僕の口の中をのぞきこみながら歯科医が聞く。「室町時代…いや、午前中の期末テストのときから」「室町?ふーん。知ってる?室町時代って入れ歯が木製だったんだって。よかったわね、令和で」。歯科医は治療を続けながら話しかけてくれる。「歯はだいじよー。食べ物を咀嚼したり飲み込んだりする口腔機能が低下するとね、食事のバランスが崩れて、生活習慣病のリスクが高まったりするの。歯をだいじにして、ちゃんと食べて、来週また来て。放置しちゃだめよ。受験の日に痛くなったら大変でしょ?」

あの先生、話がおもしろかっただけじゃなくて、本当にテキパキしていたな。
病院って、どこも忙しいんだろうな。帰り道、コロナ禍になってから忙しさが増した母親のことを思った。ちゃんと食べてるんだろうか。言葉にしたら、「あんたこそ」って叱られそうだから、まずは心配をかけないよう、ちゃんとした食生活にシフトすることに決めた。

Episode 1| 04

悩みを解決する道を自分で見つけられたのは、心理学の専門かのおかげでした。

部活動 × 心理

高校生全国放送コンクールの全国大会まであと1か月。全道大会のアナウンス部門で好成績だった私は、全国大会での上位入賞は確実と周囲から言われていました。みんなの期待に応えなきゃ。全国大会を前に、私は発声練習や、アナウンス原稿を読む練習に励んでいました。

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全国大会が近づくと、先輩たちや卒業生が指導してくださるのが恒例。今年も放課後の部室では先輩たちのどなたかが私を待っています。指導はとてもありがたい。大感謝。でも、「『陸上競技大会が開かれ』ってところを強調したほうがいいね」「『陸上競技大会』より、高校名のほうが重要だからそっちを強調しましょう」「ここはもう少し間をとって」「全体的に間をとりすぎてるね」。先輩によって注意ポイントが違うんです。A先輩の言うとおりにすれば、B先輩に注意され、B先輩のアドバイスに従えば、後日、A先輩に「直ってないわね」とがっかりされる・・・・・・。

いったい、どうすればいいの?先輩たちの言うとおりにできなくて、私の胃はキリキリ痛み始めました。

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私が、大会を控えて気持ちが不安定になっていることに気づいた担任の先生が、「スクールカウンセラーとお話ししてみない?ちょうど今日は相談日よ」と声をかけてくれました。

放課後、思い切って相談に行くと公認心理師の資格をもつスクールカウンセラーは、私が今、どんな状況に置かれているのか、 何に悩んでいるのかをじっくりと聞いてくれました。話しているうちに、「指導内容が先輩によって違うことを、先輩たちに相談すればよかったのかも。私、遠慮しすぎてた?」。悩み解決への道が見えてきたようです。

人の心って不思議だな。一人でぐるぐる悩んでいたときには出口は見つからなかったのに、話を聞いてもらって、上手に整理できたことで自然に解決法が見えてくるなんて。気がついたら、あんなに辛かった胃の痛みも軽くなっていました。明日の放課後の練習が楽しみです。

  • 現場で活躍する公認心理師のストーリーはこちら
心の問題に対応する専門知識を学ぶなら
  • 心理科学部 臨床心理学科
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Episode 1| 05

誰もがスポーツを楽しみ、交流できるそんな社会づくりをめざす人に出会った。

スポーツ×福祉

僕の通う高校では、年に1度、授業の一環としてボランティア活動をする。今年、僕が選んだのは市内の社会福祉法人が主宰する障がいをもつ人たちのスポーツクラブへの参加。中学時代からテニスを続けてきた僕なら、何か役に立てるのでは、と考えたからだ。

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当日、体育館で僕を迎えてくれたのは社会福祉法人に勤める澤田さんだ。社会福祉士で、スポーツ指導員もしているのだとか。
「いらっしゃい。今日はスポンジテニスの練習日なんですよ」

スポンジテニスは、当たっても痛くないスポンジボールと短くて軽いラケットで行うスポーツ。バウンドしたボールはスピードがダウンするため、体に障がいをもつ人でも安全に楽しく参加しやすい。ダブルスのゲームに参加した僕は、あっという間に夢中になり、汗だくで練習試合を終了した。

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「どうだった?」
練習後、澤田さんが声をかけてくれた。
「楽しかったです。僕らの部活での練習メニューを取り入れたらもっと強くなれそうです」
そう答えると、澤田さんはにっこり笑って言った。
「そうだね。強くなったり試合に勝ったりはとても大切。でも、スポーツにはもっといろいろな面があるんだ。障がい者や高齢者、子どもなど、みんなで一緒に楽しめるようルールや道具を工夫するアダプテッド・スポーツも、勝ち負け以外の良さもある分野。私は、アダプテッド・スポーツの普及が、障がいの有無に関係なく誰でもスポーツを楽しめる社会づくりに、つながるといいなと思っているんだ」

澤田さんの言葉で、僕は考えたこともなかったスポーツの奥深さを知った。
「次の練習日、いつですか?」
将来、地域活性化に関わりたいと考えている僕にとって、スポンジテニスは大きなきっかけになりそう。これから、スポーツと福祉のことをもっと考えてみようかなという気持ちになっている。

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スポーツを福祉に生かすなら
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