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Another Story

Episode2

〜 やりがい編 〜

選んだ道を自分自身の誇りに。
5人の医療人のストーリー

Episode 2| 01

安心・安全な薬物療法のために、薬学の専門家として果たす使命がある。

薬剤師 ×
医療に関わる使命

「里見先輩は、どうして薬剤師になったんですか?」
昼休み、春に採用されたばかりの新人薬剤師の佐藤さんが、お弁当を頬張りながら尋ねる。
「国家資格だし、一生続けられそうな仕事じゃない?家族の転勤で引っ越しても、全国どこでも仕事がありそうだし」
「あ、私といっしょですね。でも、勉強することは多いし、きちんとお薬を飲んでくれない患者さんもいるし、大変です」

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午前中、粉薬が苦手な高齢の患者さんへの対応に、佐藤さんが苦労していたのを思い出した。

「お薬を飲むときにむせるのが怖いそうなので、服薬ゼリーだとつるんと飲めますよとお伝えしたのですが…」

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もちろん、国家資格というのも薬剤師を選んだ理由だけど、でもそれだけじゃない。子どものころ、嫌いな粉薬を飲みやすくする方法をいっしょに考えてくれた薬剤師さんに憧れて、私は薬剤師になった。

薬剤師の仕事は処方せん通りに薬を揃えることだけじゃない。患者さんによって服薬指導での説明のしかたも異なるし、副作用や飲み合わせのチェックのために病気に関する知識も必要。感染症対策や食中毒など社会や地域での課題にも対応していくのも薬剤師の仕事。そして、医師の処方せんをチェックして飲み合わせは正しいか、薬の量の適正を見極める。処方ミスの可能性があれば、疑義照会という医師への確認を行う役割も担う。

他の専門職や医師たちと連携してのチーム医療も求められる。例えば、超高齢社会では複数の病気をかかえる高齢者も多く、既往歴やアレルギー歴などにも注意しなければならない。私が勤務する総合病院ではアレルギー検査は皮膚科が担い、その検査結果や治療内容によっては麻酔科医が外科や歯科で使う麻酔薬の選定や量、タイミングを図る。薬剤師も検査結果を踏まえて処方を確認する。複数の医療の専門家が連携することで、患者さんの健康を支えるのがチーム医療。薬剤師もその一員だ。

薬剤師に求められることは、子どものころのイメージよりももっと幅広くて高度だ。チーム医療の一員としての役割がある。さらにこれからは、AI(人口知能)が解析したデータを、私たちが医療に役立てる時代。例えば、化合物の膨大な組み合わせから適したものを検索して短期間で新薬を開発するなど、薬学とAIの恊働が期待されている。患者さんに向き合うこと、一生学び続けることで患者さんやその家族、地域社会の力になれることは大きなやりがいだ。

「佐藤さん、患者さんがお薬を服用しやすくなる方法、一緒に考えよう」

大変だけど患者さんや地域社会の健康と幸せに貢献できる。そんな薬剤師の仕事のやりがいを、佐藤さんにも感じてもらえたらうれしい。

Episode 2| 02

患者さんが元の日常を取り戻せるようサポートするのがリハビリテーションの専門家です。

PT・OT・ST ×
リハビリテーション現場
での役割

この春から私が担当するのは高齢のキクさん。くも膜下出血を起こし、右足と右手が麻痺していたのですが、理学療法士の先輩が付き添っての歩行練習やバランス練習で、少しずつ動けるようになりました。歩行練習などは続けながらも、実際の暮らしを想定した細かな動きができるように作業療法でも援助をします。作業療法士の私の出番です。

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キクさんは毎日まじめにリハビリテーション室に通ってきます。でも、体はイメージ通りには動きません。
「学生のころはソフトボールの選手だったの。運動が得意でね。…なのに、体が動かないなんて…」
なかなか改善しない体の状態に、キクさんの気持ちはふと沈んでしまうことが多くなりました。そうなると、リハビリテーションもうまくいきません。悪循環。やがて、便座に座ったり立ったりするトイレ動作や、浴槽に出入りする入浴動作の練習も嫌がるようになりました。

どうしたらいいんだろう。どうすれば前向きなってもらえるんだろう。困り果てた私は、理学療法士や言語聴覚士の先輩たちに相談しました。

「キクさんは食べる機能も少し低下しているので、摂食・嚥下のリハビリテーションをしていますが、成果が出てきていてすごくうれしそうなんです。作業療法で調理動作の練習を取り入れてみたらどうでしょう」
聞く、話す、食べる機能の回復を支援する言語聴覚士の先輩のアドバイスに、目の前がパッと明るくなりました。

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私たちチームはリハビリテーションメニューを見直しました。料理をするための動作をリハビリテーションに取り入れたことで、生活への意欲が戻り、キクさんはみるみる回復していきました。

笑顔が戻ったキクさんを見て改めて感じたのは、リハビリテーションで体が動くようになること、自立した日常生活が送れることが、大きな生きがいになるんだということ。理学療法でケガや病気で動かなくなったり麻痺したりした体が動くようになり、作業療法で自分らしい日常生活が送れるようになり、言語聴覚士のリハビリテーションで聞いたり話したり、食べたりする機能が改善する。これらがひとつになることで、患者さんのQOL(Quality of Life)、つまり日常生活の質が高まるのです。リハビリテーションを担う3職種が連携するからこそ、患者さんの力になれるのだと思いました。

これからもたくさんの経験を積んで、患者さんが豊かな日常を送れるようにサポートしていきたいです。

  • リハビリテーションを経験した患者さんのストーリーはこちら
リハビリテーションの専門職への道を選ぶなら リハビリテーションの専門職への道を選ぶなら
  • リハビリテーション科学部 理学療法学科
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OB・OGからのメッセージ
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Episode 2| 03

変化する医療現場。学び続けることで、地域社会に役立てる自分になる。

看護師 ×
医療現場の変化

夜勤明け。帰ろうとしていたら、階段から転落した女性が搬送されてきた。コロナ対応専用病棟に人手がとられているため、今日から新規外来の受け入れを停止するというのに。

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「整形の谷先生が受け入れOKしたらしいのよ」
「師長、どうします?」
「すぐに対応しましょう!」
ナースステーションは朝からバタバタだ。私も眠気が吹っ飛んだ。
幸いPCR検査の結果は陰性で、患者さんはすぐにケガの処置を受けることができた。足の複雑骨折だった。

コロナ禍の今、患者さんの家族は入院病棟に立ち入ることができない。電話で患者さんの状況を報告すると、自宅で待っているご家族のほっとした様子が伝わってきた。いつごろ退院できそうか、どんなリハビリテーションが予定されているかなど、ご家族からのさまざまな質問に対応しながら、看護師って、患者さんにとってはもちろん、その家族にとっても身近な存在でいなければとあらためて感じた。

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看護師になって毎日忙しい。医療の高度化や超高齢社会の継続で必要な知識も増えていくから、休みの日には勉強もしたい。毎日いっぱいいっぱいのところに、コロナ禍でさらに仕事がめまぐるしい。忙しさと変化の速さに心が折れそうな日もある。そんなとき、私は、大学時代の先生の言葉を思い出す。

「看護の現場は病院だけではありません。地域社会の中にあります。看護を必要とする人たちに配慮し、思いやる心をもって、地域社会からの要請に応える人になってください」

そんな人になれるかな。なるためにはどうすればいいのかな。看護師は患者さんやそのご家族にとって一番身近な存在だから、今日みたいに、薬やリハビリテーションのことなど専門領域以外のことを尋ねられることもある。患者さんが自分らしい日常生活が送れるようにQOL(Quality of Life)を向上させるためには、看護師以外の専門職とも連携してのチーム医療も重要。私たちに求められる能力や知識は、これからもきっと高度になっていくはず。

看護師の仕事がこんなにも幅広い知識が必要なこと、他の医療の専門職と関わりながら患者さんをサポートしていること、学生時代から知ってはいたけれど、実際に医療の現場にいるとその重要性をひしひしと感じる。
学び続けなきゃ。高水準な看護技術をもった認定看護師や、看護系の大学院で学んで専門看護師(CNS)、診療看護師(NP)をめざすことも視野に選んだ道を進んで行こうと思う。

Episode 2| 04

ストレスを力に変える。公認心理師の僕が社会のためにできること。

公認心理師 × 企業活動

公認心理師の資格を取得してから5年が過ぎた。今僕は週に1度、とある企業に出向き企業カウンセラーとして社員の心の悩みに対応している。僕みたいな仕事は本来、ヒマなほうがいい。だけど最近、カウンセリングに訪れる社員は増えている。仕事とプライベートのバランスがうまくとれなかったり、職場の人間関係に悩んでいたり。そういえば、昨日会った高校生も、高校の先輩たちに気をつかいすぎて悩んでいた。僕が高校生のころなんて楽しいだけの毎日だったのに。時代の変化で心をとりまく環境も変わる。

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この会社の社員たちのために、できることってなんだろう。

僕は総務課長に、「ストレスマネジメント研修をやらせてもらえませんか」と提案した。大学時代に心理学を学んでいた課長も、最近の職場環境にストレスを抱えている社員がいることに気づいていたという。
「曽根さん、研修の準備をお任せしていいかな。私は、社員たちが研修に参加しやすいよう、各部署のマネジャーに話を通しておくよ」
「もちろんです、がんばります」

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これまで、研修を受けたことはあっても、自分で研修を行うのは初めてだ。でも、公認心理師になるため大学時代に学んできたことを振り返り、カリキュラムを組み立てていった。

ストレスをなくすことはできない。大切なのは、自分自身のストレスを客観的に見ること、そして、ストレスを前向きな力に変えること。まずは、そのスキルを伝えられることを目標にしよう。そして、ストレスから生まれるメンタルヘルスの不調を予防し、この会社だけでなく、地域の人々の力になれるよう活動を続けていこう。

Episode 2| 05

夢への一歩。地域や行政ともつながりながら、みんなが元気で暮らしやすい社会をつくりたい。

社会福祉法人スタッフ
× 行政との連携

社会福祉士の澤田です。社会福祉法人で障がいをもつ利用者の方々の相談にのったり、利用できる制度やサービスの紹介をしています。また、アダプテッド・スポーツの指導にも取り組んでいて、週に1度、障がいをもつ人たちとスポーツを楽しんでいます。

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最近、施設のある地域の人たちとの交流ができないかなと考え始めています。できれば、スポーツを通しての交流で、地域の人たちの健康増進にも役立てたらいいなって思うんです。

「ホームページで仲間づくりを呼びかけたり、町内会の会合に参加して提案したり。でも、興味をもってくれる人がなかなかいないんですよね」
助成金のことで訪ねた区役所で、僕は少し愚痴ってしまった。聞いてくれたのは障がい福祉課の高崎さん。
「何かきっかけがあるといいのかも。先日、私の叔母が階段から落ちて骨折したんです。入院中、付き添った姪が医療スタッフの動きを間近で見たからか、突然、医療に興味をもちだしたんですよ。そんなちょっとしたきっかけが、何かを変えることってありますよね」

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そうか。大学時代に友だちと二人で始めたボランティア活動は、少しずつ仲間が増えていって、卒業するころには他大学とも連携する大きなサークルになっていた。最初は小さくても、興味をもってくれる人が少しずつ増えればプロジェクトは大きく育つ。身近なところから声をかけてみようかな。

「高崎さん、ありがとうございます。参考になりました。いつか市や区と連携できるくらいの交流会になるようがんばります」

僕は、これから進んでいく道が明確になったことで、やる気がみなぎってくるのを感じながら、障がいをもつ人たちとのスポーツクラブでの練習に向かった。たしか今日は、高校生のボランティアが参加するはず。アダプテッド・スポーツに興味をもってくれるといいな。

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