なぜ、チーム医療が必要なのか?
超高齢社会を迎え、医療のあり方は変わろうとしています。また、医療の高度化・細分化を背景に各専門職の連携の重要性は増しています。今、最適な治療やケアを行うために医療や福祉の現場ではチーム医療が欠かせないものなのです。
患者さん中心の
治療・ケアを実現するために
身体の状況や希望することは、患者さんによって異なるため、どのような治療やケアが適しているかが違ってきます。患者さんが納得できる治療・ケアを選び、最善の治療やサポートが受けられるように、さまざまな専門職が力を合わせ、あらゆる面からの最適な方法を考えることが求められています。
超高齢社会を住み慣れた地域全体で支えるために
超高齢社会を住み慣れた
地域全体で支えるために
超高齢社会を迎えた今、医療は「病院から在宅へ」「病気の治療から予防へ」と変わろうとしています。年をとってからも、住み慣れた地域や家で自分らしく暮らせる社会をめざすため、保健・医療・福祉の専門職が連携した多面的なサポートが重要なのです。
65歳以上の人口は、昭和25年(1950年)には総人口の5%に満たない割合でした。しかし、その後、高齢化率は上昇を続け、令和3年(2021年)10月1日現在では、総人口の28.9%に達し、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上です。総人口が減少するなか、65歳以上の人が増加することで高齢化率は上昇を続けます。
医療の高度化に
対応するために
対応するために
医療は日々進化しています。と同時に、各専門職の役割も高度化・細分化しています。医療のすべてを把握することは、患者さんはもちろん、分野の異なる専門職にとってもますます難しいこととなります。他の職種の専門性を理解し合い、コミュニケーションをとるチームでの医療が、より良い治療・ケアを実現します。
- 薬学部 薬学科
- 早坂 敬明講師
さまざまな医療職が専門性を発揮。
患者さんの回復がチームの喜びです。
チーム医療の始まりはさまざまな医療職による『栄養サポートチーム』。それぞれが専門性を発揮し連携することが治療に有効と証明されました。現在のチーム医療は、チーム間のコラボです。脳梗塞で口から食べられない患者さんは唾液が気管に入り肺炎をおこします。写真のような『口腔ケアチーム』や『栄養サポートチーム』では、歯科医師と歯科衛生士が口腔の観察とケアの方法を考え、看護師がケアを実施します。食べるための訓練、姿勢、介護用品選択は、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士の得意分野です。社会福祉士と公認心理師は、患者さん家族を経済面や心理面で支えます。薬剤師は、医師と協力し患者さんが必要なカロリーやビタミンが入った点滴を調製します。臨床検査技師は、点滴からの水分や栄養素が適切かを推定し情報提供をします。患者さんが回復することは、チーム全体の大きな喜びです。皆さんも医療者となり、活躍してみませんか。
- 看護福祉学部 看護学科
- 竹生 礼子教授
在宅医療を希望する患者さんと家族を
チーム医療が最期の日までサポート。
チーム医療ではさまざまな医療職が力を合わせて、患者さんとその家族を支えます。Aさんは、80代後半の女性で、夫と二人暮らし。大腸がんで入院し、治癒が見込めない状況だと診断されました。夫は、重い認知症を併発していたAさんを住み慣れた自宅で看病したいと考え、病院の担当医に伝えました。在宅医療への移行が決まり、メディカルソーシャルワーカーを中心に準備がスタート。退院後は、訪問看護師がAさんの自宅を定期的に訪問し、病状の観察・療養のサポートを行いました。同時に、訪問医による訪問診療、薬剤師の訪問薬剤指導が導入され、介護福祉士が訪問介護を担当。関節の拘縮を防ぎ、楽な姿勢を保つために理学療法士の訪問リハビリテーションも取り入れました。多職種チームによるサポートを受けながら、Aさんは痛みが緩和された日々を過ごし、穏やかに自宅で息を引き取りました。