薬学科
みなさんは、『プレアボイド』という言葉をご存じですか? Pre(~の前)とavoid(回避する)という単語を組み合わせた造語です。1997年ごろに日本病院薬剤師会という病院で働く薬剤師で構成される団体が『プレアボイド報告制度』という活動を始めました。 プレアボイドは、薬剤師(特に病院勤務薬剤師)が患者さんに生じる恐れのあった副作用などリスクを未然に、あるいは軽微な段階で回避したり、薬による治療が不十分な状態を改善するといった業務です。 この模擬講義では、たくさんのプレアボイド事例をわかりやすく紹介し、薬剤師の仕事の裏側を覗いてもらうとともに、薬学部での勉強とどのように関係しているかをお伝えしたいと思います。
教授
小林 道也こばやし みちや
皆さんは普段どのような薬を使いますか?風邪薬、頭痛薬、花粉症の薬、湿布。ドラッグストアで買える薬もありますし、病院で処方される薬もあります。私たちは病気の症状に応じた様々な種類の薬を手に入れることができ、その恩恵を受けています。では、そもそも薬の正体とは?薬はなぜ効くのか?薬はどのように作られている?これらの謎を解く鍵が「有機化学」です。有機化学の知識や技術を駆使することで、薬が病気に効くメカニズムを理解し、薬を効率的に作り出すことができます。この講義では、薬を開発するにあたり、有機化学がどのように貢献しているかについて分かりやすくお話しします。
小林 健一こばやし けんいち
現在日本では一生のうちに二人に一人ががんになるといわれており、その治療方法の開発は医療上の大きな課題となっていますが、そもそも、がんはどうして発生するのでしょうか?がん細胞は、無限増殖能(無限に細胞分裂できる能力)や転移能(発生部位から体内のほかの臓器に移動し、そこで分裂増殖できる能力)など、正常な細胞とは明らかに異なる能力を持っていますが、このような能力の獲得には、がん遺伝子やがん抑制遺伝子とよばれる遺伝子群の変異(遺伝子機能の上昇や消失)が必要であることが明らかになっています。この講義では、生化学や分子生物学の観点から、がん細胞ではどのような遺伝子の変異が生じているのか、そして、遺伝子の変異の結果として細胞内にどのような反応の変化が起きているのかということをテーマに、分子(DNA、RNA、タンパク質)のレベルで分かりやすく解説します。また、このような発がんの仕組みの解明が、どのように抗がん剤の開発に応用されているのかという点についても紹介したいと思います。
中川 宏治なかがわ こうじ
千年以上の歴史をもつ伝統医薬「漢方薬」は重要な医療手段として利用されています。漢方薬で用いるお薬を「生薬(しょうやく)」と呼び、生薬の多くは100種類以上の薬用植物から得られます。薬用植物には様々な化学成分が含まれ、人々の健康に役立っています。伝統医薬をもとに、新しいバイオテクノロジーを利用したお薬についてお話しします。
高上馬 希重こうじょうま まれしげ
近年、使用されたプラスチック廃棄物(プラごみ)が海洋汚染を引き起こし、マイクロプラスチックに破砕された後は、魚介類を介してヒトに摂取されることが問題となっています。海洋プラスチックには様々な化学物質が添加または吸着されており、薬学の視点で考えると、プラごみ問題はこれらの化学物質による生物汚染の問題と捉えることができます。薬学とは本来、薬の専門家を育てる学問ですが、広義には薬を含む化学物質の専門家を養成する学問でもあります。本授業では、我々人類が便利と引き換えに発生させたプラごみ問題を薬学の視点から分かりやすく解説し、その対策についても議論します。
小島 弘幸こじま ひろゆき
ヒトの機能を維持するために、生理活性物質やホルモンは重要な役割をはたしています。体内に存在する物質の変化が、神経疾患と関連している可能性を見つけました。この物質は、健康なヒトでも年齢とともに生体内の濃度が変化します。もしかすると、その変化の違いが病気の始まりと関係があるかもしれません。このことが関連づけられると、早期からの治療が始められます。さらに、有効な薬を用いることもできます。新しい発見に至るまでのエピソードや病気との関係について、わかりやすくお伝えいたします。
浜上 尚也はまうえ なおや
薬剤師業務の根幹は医薬品適正使用に係る正確な調剤であるが、医薬品を供給する役割のみならず、その使用を包括的に管理し薬物療法に係る安全性と有効性を評価する専門職へと変わりつつある。薬物療法の質の向上および患者安全の確保を目的として、医師や看護師等の医療職と協働する多職種連携への積極的な関与および客観的なエビデンスの蓄積が望まれています。患者さんにより良い医療を提供し、チーム医療に貢献する薬剤師になるための6年制薬学教育についてお話しいたします。
平野 剛ひらの たけし
人間は長い年月と多額の費用をかけて様々な化学構造をもつ薬品を発見・合成してきました。しかし、薬品はそのまま飲むとすごく苦かったり、分解してしまったりします。そこで私達が飲んだ時に医薬品が有効に働くように、錠剤やカプセルのような形にします。そこにはどんな工夫がされているか想像できますか?きっと皆さんが予想もしていなかったドラマチックな工夫がなされているのです。 講義では、最近の新薬も含めてDrug Delivery Systemと呼ばれる工夫された医薬品について、効果や副作用、身体の中での動きを併せてお話します。
准教授
小田 雅子おだ まさこ
「ビタミンを摂りましょう」と耳にすることがありますが、ビタミンは、いろいろな機能を持っています。薬学部では、化学的な観点、物理的な性質、生体内での役割、病気の治療での使用など、いろんな科目で勉強します。この講義の中で、ビタミンってなんだろう?という疑問を、薬学部ではどの様に解決していくかについて紹介したいと思います。
小林 大祐こばやし だいすけ
みなさんはCMなどで「眠くなりにくいお薬」などのフレーズを聞いたことがありますか?薬を誤った用法・用量で服用すると身体に悪影響が出るのは当然ですが、正しい使い方をしてもなお「眠くなる」などの悪影響が生じる場合があります。薬が身体に及ぼす不利益な作用を「副作用(または有害作用)」といい、薬が身体に及ぼす有益な作用を「薬理作用」といいます。薬学生は将来、薬剤師としてこの違いを患者さんに正しく理解してもらうため、大学で「薬理学」を学びます。この講義では具体的に薬理作用と副作用とは何か、薬物治療を行う上での薬理学の重要性について、大学での「薬理学」講義を交えわかりやすくお話します。
町田 拓自まちだ たくじ
皆さんは、「薬を飲む際に何か注意していることはありますか?」、「決められた用法・用量に従って、水で飲んでいますか?」。普段何気なく口にしている食べ物や飲み物は、薬の効能・効果に影響を及ぼします。飲み薬の一生は、胃や小腸で吸収され、血液中に入り、血液に乗り肝臓を通り抜けて全身へ運ばれ、目的の臓器で効果を現します。その後、役目の終わった薬は体外へ排泄されます。吸収・分布・代謝・排泄というそれぞれの過程において特定の薬と飲食物は薬の効果を上げたり、下げたりします。この講義では、代表的な薬と飲食物との相互作用に関していくつかお話しいたします。
講師
木村 治きむら おさむ
植物たちは各々が他とは異なる成分をその生体内で作り出しています。たとえば、ニンジンと言えば-カロテン、コーヒーと言えばカフェインを思い浮かべる方もいることでしょう。これらの植物固有の成分は二次代謝産物と呼ばれる有機化合物です。実際に医療の現場で使用されている医薬品の中にも、植物が作り出す有機化合物が含まれていることをご存知でしょうか。植物が人類の生活や健康に如何に貢献しているか、植物たちの作り出す有機化合物についてお話しします。
金 尚永きん さんよん
アルブチン、アスコルビンサン、グラブリジン・・・なにかの薬かと思うかもしれませんが、これらは医薬品の名前ではありません。これらは植物が作り出す有機化合物であり、天然の化粧品成分です。植物からは多くの医薬品となる有機化合物が見出されていますが、他にもサプリメントや医薬部外品、化粧品成分となるようなものも発見され、それらは皆さんの生活で利用されています。 この講義では、ヒトリシズカという植物の研究から、世界初となる有機化合物を発見し、それが化粧品成分の名前になった、製紙会社&化粧品メーカー&本学との共同研究についてお話しします。
私たち人間は、進化の過程で大脳皮質が発達し、他の動物よりも複雑な行動をとる能力を手に入れました。しかし同時に、私たちが作り上げる社会もまた複雑化してしまい、心の病を抱える人が増えてきました。日常生活で感じる「不安」や「喜び」などの感情は、私たちの脳がコントロールしています。何かしらの原因で脳の一部が正常に働かなくなると、心の問題が生じると考えられています。 薬学部では、「薬理学」という薬の効果について追究する学問を学びます。この模擬講義では、「心と脳の関係はどうなっているのか」「心と体の不調はどうして起こるのか」などについて、さまざまな研究を通じて明らかになってきた知見とともに「薬理学」の視点からお話します。
鹿内 浩樹しかない ひろき
高齢者は、加齢に伴い臓器機能が低下し、外的ストレスに脆弱になっています。このような状態を『フレイル』と言います。2022年9月の総務省統計局発表では、総人口に占める高齢者(65歳以上)の割合は、29.1%と過去最高となりました。人生100年時代、日本の経済成長や働きがい、即ち生きがいに満ちた社会にするためには、元気で活力のある高齢者の社会への参画が必須となります。そのためには、いかにフレイルの進行を緩やかにし、健康寿命を延ばせるかが鍵となります。薬学部では、病気に対する薬物の治療方法以外に、病気の予防、栄養と健康についても学んでいます。また、フレイル進行の要因に低栄養状態が知られていますが、高齢者をサポートする上で栄養状態の評価は大変重要です。今回の講義では実践できる高齢者の栄養評価方法と摂取してもらいたい栄養素について皆さんと考えたいと思います。
早坂 敬明はやさか たかあき
私たちの体が健康を保つためには、細菌やウイルスなどの外敵が侵入して増殖しないように、自分の細胞と異物を見分けて排除する仕組みが必要です。これを「免疫」と言います。しかし、免疫システムに異常が生じ、自分の細胞を敵と見なして攻撃すると「自己免疫疾患」が発生します。 薬学部ではまず「体の正しい機能」を学び、続いて「病気の発生メカニズム」、そして「薬がどのように作用するのか」を順に学んでいきます。この講義では自己免疫疾患を例に、正しい免疫システム、病気のメカニズム、主な薬と最新の薬の作用についてお話しします。最後に、患者さんにとって最適な治療薬の選び方について考えます。
水野 夏実みずの なつみ
集合時間
1年生(4年生)
2年生(5年生)
3年生(6年生)
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合計